Takamatsu Jr. Club ~ドッジボールクラブ~ 第弐ブログサイト

屋島で頑張っているJ.D.B.A.(一般財団法人日本ドッジボール協会)登録のドッジボール・クラブです!

ドッジボール・ラノベ『飛球少年』 その陸 ~懇願~

それから、俺は何かに取り憑かれたようにボールを投げまくった。
父さんはボールをキャッチした後、手をぶらぶらさせるようになり、
「隆太、そろそろ休憩しないか?」
なんて、俺より先に音をあげた。
仕方なく父さんと一緒に、木陰に腰を下ろして、そして俺は言った。
「父さん。俺、やっぱりドッジボールやりたい。
体験じゃなくて、メンバーになりたい。」
父さんは黙り込んで、ただ俺の目を見ていた。
そして、ようやく言葉を返した。
「隆太、小学1年から3年まで野球をやって、途中から練習行かなくなったのを覚えているかい?
それに、昨日も途中で体育館を出て行ったそうじゃないか。」
「なんで父さん、その事知ってるの!」
「父さん、見てたんだよ。
で、どうなんだ?
同じ事を繰り返すようなら、やらせてあげられないな。
隆太は、なんでやりたいと思ったんだ?」
父さんは俺の目を見る。
だが、『やらせてあげられない』という、その言葉を聞いた時、俺は少し泣きそうになった。
ようやく見つけた宝物を目の前で壊されるような、そんな感覚だった。
俺には、野球をやってる中学生の兄貴がいるから、俺も野球をやりたいと思ったけど、面白くないし、何より練習のために友達と遊べないのが嫌だった。
でも今回は違う。
俺が見つけて、俺がやろうと決めたんだ。
「俺、初めてドッジボールの練習してるとこ見た時に、かっこいいな、俺はなんであの中にいないんだ!って悔しかったんだよ。
でも、よくわかんない練習だったから出て行っちゃって…ごめんなさい。
でも、俺今度から絶対そんなことしないよ!約束するから!」
父さんに言い放った。
言い終わったら、何故か分からないけど俺は泣いていた。
父さんは驚いたような顔をしている。
「…父さん、隆太のこんな必死なお願いは初めてだよ。
そんなにやりたいのか?」
「うん、やりたい!やらせて!お願いだよ、父さん!お願いします!!」
必死の形相で父さんにお願いをした。
すると、父さんは1つ溜息をついた。
(やっぱり駄目なのかな…)
「そこまで言うなら、やってごらん。
でも、もし練習をサボるような事があったら、わかってるね?」
「絶対しないよ!ありがとう、父さん!!」
喜びと、これから待つ練習の日々、そして、いずれメンバーの中にいる自分を思い浮かべて、俺は歓喜に体を震わせた。
父さんは、少しホッとした顔をして、
「よし、休憩終わりだ。やるぞ!」
俺の頭を大きく撫でて、立ち上がり言った。
俺は、そんな父さんの背中を追いかけて、また再び父さんとのキャッチボールに汗を流すのだった。