Takamatsu Jr. Club ~ドッジボールクラブ~ 第弐ブログサイト

屋島で頑張っているJ.D.B.A.(一般財団法人日本ドッジボール協会)登録のドッジボール・クラブです!

ドッジボール・ラノベ『飛球少年』 その漆 ~期待と不安と~

正式なメンバーとしての練習を火曜に控えた月曜。
俺は、学校で一日中そわそわしながら過ごしていた。
「隆太、ドッジボールどうすることにした?」
最後の体育で、サッカーの授業の時、陽平が俺に話しかけてきた。
「ああ、俺もやることにした!
これから、よろしくな!」
「え、ほんと!?
多分、大変だと思うよ。大丈夫?」
そんな陽平の心配はありがたいけど、俺には必要なかった。
「大丈夫に決まってんだろ!
俺、すぐにでもリーダーになってやるから!」
俺のはちきれんばかりの笑顔に、陽平はまだ少し不安げな表情をしていたが、
「そっか…一緒に頑張ろうぜ。
タッグとか組んで、最強チーム結成だな。」
にかっ、と笑って言った。
最高の気分で、本当に最強になれる、そんな気がしてサッカーボールを思いっきりゴールに向かって蹴りあげた。

そして、待ちに待った火曜日の夕方。
五時から始まる練習に、母さんと共にやって来た。
陽平は、既に体育館の中でアップをしている。
(早いな、陽平。くそ!今度は、もうちょい早めに来ないと。)
相変わらず、俺は陽平に対してライバル心を抱いていた。
俺にとって、陽平は親友だけど、一番近い存在だからこそ誰よりも負けられない、負けたくない相手だ。
どんな些細なことでも、俺は陽平に勝ちたかった。
「お、隆太君、正式なメンバーの一員だな。
これから頑張れよ。」
コーチが、ちょうど体育館に入ってきて、俺に声をかけてきた。
「はい!よろしくお願いします!!」
「元気のいい挨拶だな。
練習は、しんどいとは思うが、頑張ればチームでも活躍できるようになるから頑張ってくれ。」
励ましの言葉をコーチは俺にくれた。
そんなコーチに、俺はこの人に認められたいという想いが強くなった。
俺は、すぐにでもキャッチボールの成果を見せたかった程、今日を待ち望んでいた。
「じゃ、ランニングするよー、集まって!」
小学6年の、上級生の女子が声をかけた。
皆、ばたばたと集まり、列に並んだ。
俺は、新入りとして最後尾に並び、今日こそはバテないで皆と一緒にゴールする、そんな気持ちだった。
すると、陽平が俺の隣に並んでいた。
「あれ、陽平、前じゃないの?」
「俺、隆太と一緒に走るよ。
最後のダッシュの時、どっちが速いか競争しようぜ。」
そんな事を言われると、俺が燃えることをわかっていたんだろう。
陽平は、俺のことを凄く気にかけてくれていたようで、
「大丈夫だって、隆太。
足、速いじゃん。こないだは緊張してただけだって。」
と、正直不安だったことを見抜かれていた。
「絶対、陽平には負けねーから!」
「僕だって、隆太に負けない位、足速くなったとこ見せてやるよ!」
そういって、元気良く2人で足を踏み出した。
陽平が隣にいる安心感で、5分超えても足に力がしっかり入っている。
そして、最後のダッシュは、流石に練習をやり続けている陽平には負けたが、それでも最後まで全力で走り切って、皆と遅れを取らずにゴール出来た。
「さすが隆太、次くらいには追いつかれそう。」
「絶対、追いついて、追い抜いてやるから覚悟しとけよ!」
そんな元気が残っている自分が嬉しくて、清々しい気持ちで2人笑いあった。