Takamatsu Jr. Club ~ドッジボールクラブ~ 第弐ブログサイト

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ドッジボール・ラノベ『飛球少年』 その捌 ~嫉妬~

あれから俺は、キャッチボールを、そして他のメンバーはチーム練習を行っていた。
初めての時は、一切こっちを見向きもしなかったコーチが、たまに俺の投げている姿を見ていることに気づいた。
そして、休憩に入る前に声をかけてきた。
「なあ隆太君、何か他にスポーツでもやってたの?」
俺は、てっきりキャッチボールの事を褒められるものだと思い、期待していた分、今の質問に呆気にとられた。
「あ……野球やってました…。」
コーチは、それを聞いて1回頷くと、また質問をしてきた。
「なぁ、隆太君は、野球のどのポジションだったんだ?」
「え?あ、外野です。レフトでした。」
俺には、コーチが何故このような質問をしてきたのか、さっぱりその意図が読めなかった。
「そうか、うん、わかった。さっきのキャッチボール、良くなってたね。
チーム練習の様子ちゃんと見といてね。
いずれチームに入ることになるからね。」
コーチは、それから休憩を取るように言った。
俺は、何か投げ方がおかしいのだろうか、そんな不安を抱いた。

キャッチボールを終えて、新しく俺は、スクワットをさせられた。
野球をしてた時は筋トレもやっていたが、もう一年もまともに運動していなかった為に、身体はすぐに悲鳴をあげた。
(うわ、きっつ…足、ぷるぷるする。)
そして、なんとか30回やり遂げ、少しのブレイクタイムを取っていた。
目の前では、陽平を中心に隊列が組まれ、コートを横切るように並んでいた。
しかし、ふと気になった事がある。
何故、小学5年生の陽平がリーダーをしているのだろう。
小学6年生の先輩は4人も居るのに。
見る限りでは、6年の先輩は陽平の両隣と、列の最後尾に両サイド並んでいた。
何故か中心にいる陽平。
(もしかして、陽平って、めっちゃ強いんかな…)
急に俺は、胸が締めつけられる感覚に陥った。
同じ小学5年で、親友が目の前にいてリーダーをしている。
かと言う俺は、チームに入れず体育館の端で筋トレなんかしている。
あんなに近くにいたと思っていた陽平が、ずっと遠くに感じる。
それから俺は、チーム練習を見るというより、陽平の動きをひたすら見つめていた。
そして、俺は陽平の動きを真似するようになった。
まるで、鏡のように陽平のフォームを真似て、ボールを受け取る腰の高さも同じ位に落とした。
でも、絶対に陽平に直接聞くことはしなかった。
そうやって、この火曜日、陽平のコピーとして一日過ごしてみると、筋トレをする以上に身体が痺れているような、硬くなっているような気がした。
(もしかして、あいつ…)
何かに気づいた俺は、練習が終わり、迎えに来ていた母さんと家に帰った後すぐに自分の部屋に篭った。そう、気づいた何かを実行する為に……。