Takamatsu Jr. Club ~ドッジボールクラブ~ 第弐ブログサイト

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ドッジボール・ラノベ『飛球少年』 その拾肆 ~仲間との衝突~

「おい、なんでだよ!!」
いきなりの怒鳴り声に体育館は一気に静まり返った。

事の発端は、土曜日の練習で、チームを分けて対戦していた時である。
俺と陽平のチームの残り人数が相手チームより上回り、そろそろ決着が予想された頃のことだ。
俺と陽平、そして6年生の梨花が、コート内で指揮を取っていた。
そして、同い年の翔也は、俺たちと並んで相手の動きを見極め、防御に徹する役回りになっていたはずだった。
翔也の予測では、「狙われているのは陽平だ」と言われていて、「この局面では絶対にリードされてはいけない」と釘を刺されたばかりであった。
そんな大事な時に、俺がボールを取り損ね、せっかくの流れを不意にしてしまった。その時に翔也がカッとなり、俺に向かって怒鳴りつけた。
「おい隆太!お前、気を抜いていたんだろ!?
さっき言ったばっかじゃねーかよ!
これで負けたらお前のせいだ!」
わざとでは無かったし、少しボールを受け取るときに腰が上がっていたようにも思うが、しかし、俺は言い返せなかった。

すると、
「おい、なんでだよ!!」
そう叫んだのは陽平だった。
「隆太を責めるのはおかしいだろ!当たる時は当たるんだ!
お前だって、それくらいわかってんだろ!」
初めて見る陽平の怒った顔に俺は戸惑った。
メンバーの皆も見た事が無かったのだろう。
皆が陽平を凝視し、怒鳴っていた翔也ですら陽平の気迫に圧倒されているようだった。
「隆太が当たったのはわざとじゃねーんだ。
これから俺らが隆太の分を取り返せばいい話だろ!」
暫くの沈黙の後、俺が陽平に声をかけた。
「ごめん、陽平。ありがとな。」
そして外野に向かう途中、
「翔也、ごめんな、俺がミスった。後、お願い。」
そう言うと、翔也は静かに首を振り、俯いて小さく謝った。
「ごめん、俺も言い過ぎた。」
でも、それからというもの、メンバーの勢いが増し、さっきまでリードしていた差が一気に広がり、外野から見ていた俺も熱気に包まれて必死に応援した。
俺たちがやっと一つになれた、そんな気がした。

しかし、この騒動によって俺に対する周りの見る目が変わってしまった。
陽平に守られている俺、陽平無しでは何もできない役立たず、他にも色々と陽平の居ないところで陰口を耳にすることが多くなって、俺は精神的に追い詰められていった。
そして、陰口に耐えられなくなってしまった俺は、皆の視線が怖くなり、熱を出して練習を休んでしまう程だった。
父さんとの約束が頭を掠めたが、俺は父さんに陰口の事は話さなかった。