Takamatsu Jr. Club ~ドッジボールクラブ~ 第弐ブログサイト

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ドッジボール・ラノベ『飛球少年』 その拾漆 ~新たなチーム~

「次の練習試合は、隣町の小学校チームと行うことになっている。
向こうのチームは、頭のいいプレーをするのが得意だ。
ディフェンスが固いから、粘りの勝負になると思う。
だから、チームも新しく組み直して一週間練習していくぞ。」
コーチが練習終わりに来週土曜日の練習試合についてを話し出した。
早速、チームメンバーが発表される。
陽平はもちろん入っていたし、他にもいつものメンバーがいた。
そして、俺もアタッカーとして新たにメンバー入りを果たした。
しかし、挙がっていく名前に翔也の名前は無かった。
チームの司令塔のような役割だった翔也は、自分が抜けるはずはないと思っていたのか、名前が出て来なかったことに疑問を抱いているようだ。

「あの、コーチ、俺の名前が呼ばれてないです!」
翔也は、すかさず手を挙げた。
「いや、呼んでないからな。今回の練習試合は翔也は応援してくれ。」
コーチの言葉に翔也は泣きそうだった。
あんなに嫌味ったらしく俺の事を酷く言った奴が、今では捨てられた子犬のように目を潤ませている。
そして発表後、次の練習日から早速、新メンバーでの練習を始めることを伝えて、コーチは挨拶を終えた。
そして、そのあとに陽平を呼んだコーチは、何やら陽平に話していたが、俺の立っていた場所からは何も聞こえなかった。

月曜日。
学校の昼休み、陽平に呼ばれた俺は、一人で床打ちしていたボールを手放し、後をついて行った。
陽平は、体育館裏の日当たりの悪いところに俺を連れてきて、ようやく足を止めた。
「隆太、今度の新メンバーの話なんだけどさ、僕が新しく翔也の代わりにチームを引っ張っていって欲しいってコーチに頼まれたんだ。
でも、翔也みたいにボールがどこに来て、誰が狙われてるかとかわかんないし、出来る自信がないよ。
ねぇ、隆太、どうしよう」
珍しく陽平からドッジボールの相談を受けた俺は、何故かようやく陽平と対等になれた気がして気分が良かった。
しかし、一体何を言えばいいのか、どうすればいいのかなんてわからない。
「あ、でも、陽平は皆から強いって思われてるし、皆尊敬してるから大丈夫だって。なんとかなる!」
「でも……やっぱり上手く皆を引っ張っていけるかわかんないから、怖いよ……」
こんな時、兄貴ならなんて言うだろう。
いつも兄貴は俺を引っ張ってくれる。
そんな兄貴の言葉を思い出しては、一生懸命に陽平に言うべき言葉を考えた。